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Research Topics

 2011年に発生した東北地方太平洋沖地震では、それまでに想定されていた津波浸水想定域を遥かに超える領域が津波により浸水し、想定を超える津波が発生したことによって、沿岸部の都市では甚大な被害が発生してしまいました。

 この厳然たる事実を研究の動機として、当研究室では、地震による津波や、台風・低気圧による高潮等の、海岸工学が対象とする自然現象に対するリスク評価の不確実性に関する研究を進めています。2011年の震災で明らかになった通り、自然現象の評価には大きな不確かさが伴うことを認識したうえで、その不確かさをどのように適切に定量的に評価して表現することが可能なのか、また、それら定量評価が社会に及ぼす具体的な影響はどのようなものか、さらに、それら不確かな情報を受け取る側は、不確かさの情報をどのように理解することが最適であるのか等について、研究を進めています。

現在、主に以下のテーマで研究を進めています。

1.確率論的津波リスク評価に関する研究

2.確率論的高潮リスク評価に関する研究

3.津波波圧に関する実験的研究

4.その他水害に関わる研究

1. 確率論的津波リスク評価に関する研究

■相模トラフ地震の発生多様性に起因する津波ハザードの不確実性評価

津波ハザード評価(Probabilistic Tsunami Hazard Assessment:PTHA)には、発生・伝播・遡上の各過程で多種の不確実性が含まれます。現在、首都圏(特に神奈川県・東京都)に大きな影響を及ぼすと想定される相模トラフ地震を対象として,各種不確実性を考慮した津波ハザードの不確実性評価手法に関して研究を行っています。

contents
相模トラフ地震の発生多様性(防災科学技術研究所)


contents
応答曲面の構築


contents
モンテカルロ計算の結果得られた津波浸水深の頻度分布

【論文情報】
福谷陽,森口周二,小谷拓磨,寺田賢二郎 (2018) 応答曲面を用いた確率論的津波損害評価-相模トラフ地震への適用-, 土木学会論文集B2(海岸工学), Vol.74, No.2, pp.I_463-I_468. j-stage






■津波リスクの評価手法に関する研究

津波ハザード(浸水深や浸水高)と脆弱性評価を掛け合わせた津波リスクの評価手法に関して研究を行っています。現在、津波ハザードの不確実性評価に基づく複数建物(ポートフォリオ)被害の空間相関の特徴に関する研究を行っています。


contents
確率論的津波遡上評価


contents
リスク評価の流れ

【論文情報】
  • Yo Fukutani, Anawat Suppasri, Fumihiko Imamura (2016) Uncertainty in tsunami wave heights and arrival times caused by the rupture velocity in the strike direction of large earthquakes, Natural Hazards, Vol.80, No.3, pp.1749-1782. DOI:10.1007/s11069-015-2030-1. springerlink
  • 福谷陽,徳永英,佐藤一郎,今村文彦 (2015) エネルギー保存則による浸水評価を用いた広域に亘る施設群の津波リスク評価, 土木学会論文集B2(海岸工学), Vol.71, No.2, pp.I_1549-I-1554. j-stage

  • Yo Fukutani, Anawat Suppasri, Fumihiko Imamura (2015) Stochastic analysis and uncertainty assessment of tsunami wave height using a random source parameter model that targets a Tohoku-type earthquake fault, Stochastic Environmental Research and Risk Assessment, Vol.29, No.7, pp.1763-1779. DOI:10.1007/s00477-014-0966-4x. springerlink
  • 福谷陽,Suppasri Anawat,安倍祥,今村文彦 (2014) 確率論的津波遡上評価と津波リスクの定量化, 土木学会論文集B2(海岸工学), Vol.70, No.2, pp.I_1381-I_1385. (土木学会海岸工学論文奨励賞受賞). j-stage


  • 2. 確率論的高潮リスク評価に関する研究

    ■爆弾低気圧による高潮・高波の確率論的評価

    24時間で24hPa以上発達すると定義される「爆弾低気圧」をモンテカルロ法により発生させ、確率論的に潮位偏差を評価する研究を行っています。

     

    ■相模湾で発生する高潮に関する考察

    2013年4月に相模湾に面する小田原において、爆弾低気圧により発生した潮位偏差107cmの発生機構に関する研究を行っています。

    contents

    3. 津波波圧に関する実験的研究

    ■建築物内部に作用する津波波圧に関する実験的研究

    2011年東北津波では建築物が水没し、建築物が内部からも被害を受けた事例があります。現在、防衛大学校システム工学群のメンバーと共に、建築物模型の内部に津波を作用させる実験を行うことで、建築物内部に津波が流入した際の津波の圧力の影響を考察しています。

    contents

    4. その他水害に関わる研究

    ■水害BCPにおけるトリガー設定に関する研究